ハイパースペクトル技術とは、分光器と画像を組み合わせたデータを扱う技術であり、画像の各ピクセルで成分分析されたデータを2次元画像として視覚的に表現することができる。ハイパースペクトルとして撮影されたデータはx軸、y軸の他に、波長方向(λ軸)の3次元データとなる。このデータをハイパースペクトルデータ(HSD)と呼ぶことにする。
HSDのもっとも簡単な使い方としては、撮影したスペクトル画像から3枚のスペクトルを抽出し、それぞれをRGBに対応させることにより、着目している対象物を見やすくすることができる。またスペクトル情報から得られる特性指数(たとえば正規化植生指数NDVI等)に対応させ、その強度を色に対応づけると、特性変化や分布を視覚的に表現することが可能となる。HSDの可視化はマクロな特徴を得る手段として特に重要な意味を持つ。


                  図2.1 ハイパースペクトルデータ


               図2.2 スペクトルデータの例(植物の場合)

ハイパースペクトルセンサーは、グレーティング、プリズムなど連続的に波長を選択できる部品を用いて分光することにより、連続的で波長分解能の高い画像データを得ている。ハイパースペクトルセンサーは航空機搭載用センサーとしてはAVIRIS、CASI、AISAなどが既に使用されており(何れも海外製)、国内ではパスコが2004年頃から研究機関を対象にAISA HawkおよびAISA Eagleのサービスを開始している。衛星搭載用センサーとしては、2000年にNASAにより打ち上げられたEO-1に搭載されたHyperionおよび2001年にESAにより打ち上げられたPROBAに搭載されたCHRISがある。Hyperionは600-1000nmの60バンドと1000-2500nmの150バンドの2種類のセンサーを搭載した。一方、CHRISは400-1050nnの61バンドのセンサーを搭載した。日本では、経済産業省が衛星搭載用ハイパースペクトルセンサー開発費として、2007年度から5年間で85億円の予算を計上している。

 AVIRIS、CASI、AISAなど航空機リモートセンシング以外の用途としてハイパースペクトルセンサー単体でも幾つか販売されている。例えば、数年前からJFEテクノリサーチ社がフィンランドのSpecim社のハイパースペクトルセンサーImSpector(380-2400nm帯のラインセンサー)を、2006年から株式会社アルゴがNASAのスピンオフ商品としてUV100E(紫外)、VNIR100E(可視-近赤外)、SWIR(近赤外)の 3種類のハイパースペクトルカメラの販売を開始している。国産品では宇宙産業創造プロジェクトにおいて2004年5月に北海道衛星株式会社(北海道工業大学の大学発ベンチャー)が株式会社エイティーエフと共同開発したものがある。

以上のようなハイパースペクトルの研究は1980年頃から少数の研究者により研究されていたが、大容量のデータを扱うことから、その価値が注目されたのはインターネットの普及によりパーソナル・コンピュータの処理速度が急速に向上した1990年代後半頃からといえる。ハイパースペクトル技術は主としてリモートセンシングの分野の技術として発展してきたが、一方、ハイパースペクトルという名称は使っていないものの、同様な技術は、惑星探査用光学センサー、医療、バイオ、食品分野など多方面の分野でも独立に研究されてきた。そこで本論文では、分光スペクトルと画像処理を組み合わせた技術を“ハイパースペクトル技術”と定義し、これらを分野横断的かつ総括的に扱うことを試みる。
ハイパースペクトル技術とは
宇宙開発のスピンオフとしてのハイパースペクトル技術
ハイパースペクトル技術とは
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